変わらずに変わっていく  B・ホーンズビー「Absolute Zero」

何回か言っていますが、B・ホーンスビーは一発屋のイメージがあります。

日本で言うと「愛は勝つ」のKANのイメージでしょうか。

ところが、ブルースはその後、Greatful Deadに加入したり、独自の路線を進み、およそパブリックイメージとは逆のノイズメーカーズというバックバンドを付けてライヴバンドとして独自の位置を確立します。

噂ではデッドヘッズも足繁く通う、ライヴバンドになっているとか。

その雑食性は凄まじく、従来のアメリカーナ的なスタイルだけでなく、ザッパ?と思うようなホーンアレンジや、アイリッシュトラッド的なアプローチ、ブルーグラス、ジャズなど、ボーダレスな音楽性は大きな魅力になっています。

彼の新作は、さらにその冒険心を加速させた快作でしょう。

今大注目のy-musicやJ・ヴァーノンをゲストに迎え、アメリカーナ的なスタイルを崩すことなく、インディクラシックや現代音楽の要素を大胆に取り込んだり、アレンジをミニマルミュージックのようなアレンジにしてみたり、意欲的な作品になっている。

保守的なファンは反発するかもしれませんが、新しいファンを獲得する力のある作品でしょう。

ポール・サイモンの新作にも通じる大胆さは、今のアメリカーナシーンの流れを象徴しているのかもしれない。

B・ホーンスビーは日本では全く人気がないけれど、一歩間違えば新しいジャズで語られてもいいくらい洗練されていて、意欲的な作品を次々とリリースしてます。

特に「Here Come the Noise Makers」「Bride Of The Noisemakers」は、まずは彼らの魅力を知るのにうってつけの聞いてもらいたい実況録音盤です。

彼らの音楽は決して一つのスタイルに留まらず、多様な音楽をフラットに咀嚼してミックスしていく、アメリカのノーボーダーの良さを証明する好事例の一つです。

興味があれば是非。

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フジロック2019 寸評 裏ベストはブルースブッチャーズ

 今年のフジロックは、初日に見たいアーティストが集中。

2日間にしようかと思ったら、大本命のキュアーが最終日ということで、3日間参加になったのもある。

キュアーは別格として、本命ベストはジャネール・モネイだったと思う渋さチビズや中村佳穂、オリジナルラブクラムボン、MITSKIあたりが妥当な線か。

ただ、正に裏ベストと言って良いくらいに痛快だったのがアバロンでやったブルースブッチャーズ feat うつみようこ

ブルースやジャズやソウルがごちゃごちゃに絡み合ったジャンルレスなブラックアメリカンミュージック。そういうのが大好きな人間にとっては、最上の演奏。

ブルースハープはサックスに負けやしない!と豪語するような迫力満点のブルハに渋いスライドギター、リズム隊はがっつりリズムをキープし、グルーヴを絞り出す。

そこにうつみようこ永井隆の間違いないボーカルが絡めば最上のブルースロックの演奏が出来上がる。

もう予想外なことがないくらいに鉄板のナイスな演奏w

とにかく盛り上がり方が半端なくて、いつまででも聞いていたい痛快な演奏だった。

目新しさはないし、相も変わらぬ演奏といえば演奏なんだけど、だからこそスルメのように時が経てば経つほどに味わい深い。

こういうバンドがしっかり出て、良い演奏をしている間はフジロックは安泰なんじゃないかなんて思ったりする。最高でしたw

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フジロック2019 寸評 きっぷが良い男 オリジナルラブ

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思えば、渋谷系の三巨頭といえば、フリッパーズ、ピチカート、そして、オリジナルラブでした。

ただ、ニューウェイヴ、ネオアコの匂いを残すフリッパーズとピチカートに比べて、オリジナルラブはいち早くジャズやソウルの方へシフトしていました。

そのせいか、人気の面でも早い段階で失速と言うか固定してしまっていたと思います。

ちょっとマニアックというか真にボーダレスだったのはオリジナルラブでした。

そして、今のリズム重視のスウィートソウル、ミディアムファンクがヒップホップの延長でのトレンドとするならば、オリジナルラブはジャストミートなタイミングでのフジロック出演とも言えます。

かなり期待して望んだけれど、期待以上。パッキパキにキレのある演奏に田島貴男の強すぎるボーカルが乗っかって極上のパフォーマンスでした。

パンピーも飛び入りして若干暴走気味の演奏は痛快の一言に尽きます。

「月の裏側〜」「接吻」を文脈に関係なく、惜しげもなく披露するサービス精神と言う無邪気さ全開なところも田島の面目躍如w

ガハガハ笑いながら存分に演奏を楽しむ田島の姿が、いかにも彼らしい。

この底抜けの無邪気さと音楽愛。

これこそオリジナルラブの真骨頂と言えるのではないでしょうか。

ジャジーだろうが、ソウルフルだろうが、そこにジャンルはなくて、田島貴男が純粋に格好良い音楽を演奏する。

それがオリジナルラブ

惚れ直しました。

 

フジロック2019 寸評 一人じゃないって素敵なことね 七尾旅人 

 

 

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七尾旅人のライヴは何度も見てるけれど、バンドは初めて。

山本達久も参加しており、バンドでの演奏はどうなんだろう?と期待半分、不安半分だったのは確かです。

何せ弾き語りの時の七尾旅人の自由奔放さは過激でもあり、それが魅力でもあるからこそ、バンドではどうなるんだろう?と想像がつかないものでした。

結論からいうと、予想通りと言う感じ。

バンド形態の新作からが多い中、ローリンローリンとサーカスナイトを演奏。

魅力的ではあったけれど、ソロの自由さと果てしない感じがなく、むしろこじんまりしてしまった印象がありました。

長年夢だったと言うバンドでの演奏は、むしろ本人を縛りつけてしまう感じがあって、魅力的な寄り道やインプロ、サンプラーを駆使した想像破壊的wな超絶ソロプレイがないのは寂しい。

本人もそのギクシャク感は自覚しているようで、どうにも無邪気に笑ったりすることなく奥歯に何か挟まったような口調が多かったように思います。

ソロもやりつつ、時々バンドがいいのでしょう。

その時は、七尾旅人の荒唐無稽な振る舞いをがっちり受け止めてくれるベテラン達で固めるのがいいんじゃないかとw

内橋和久、梅津和時大友良英などがいいんだろうなあwやっぱりw

フジロック2019寸評 憑依体質のイタコジャズw 中村佳穂

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初日朝一、これだけヘヴンに人が集まっている光景に驚きました。

今年の夏フェスの台風の目。フェス参加頻度の高さが注目度を如実に表しています。

 

その魅力は正にライヴにあります。

第一印象は(いい意味ですよw)イタコ。とにかく音と戯れる姿が美しい。

アルバムでは見えてこない音の粒というか、音楽の躍動感のようなものが中村佳穂の演奏や動きを通して目に見えるという感じでライヴを見る醍醐味がある。

裏テーマにしていたテクノロジーの進化によるライヴの総合芸術化とは真逆の魅力を持った中村佳穂を初日一発目に見るというのも皮肉ですが、そこはそこですw

イタコの次に思い浮かべたのは憑依型女性アーティスト。そう、大竹しのぶでしたw

音楽が降りてくるどころか、取り憑かれている感が凄い。

特に中村佳穂の所作が、まるでダンスのような、パラパラの腕の振りのような、音を表現しているように見え、無意識の中で振られているが故に美しい。

唯一いえば、少々楽曲のバリエーションが狭いかも。

とはいえ、今年夏フェス注目度ナンバー1の中村佳穂は、今後も見逃せない存在です。

 

フジロック2019 豪雨もなんのその、刺激的な3日間 総評

 

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怒涛のように過ぎてしまいました、フジロック

もちろんキュアーとの邂逅も嬉しかったし、渋さの片山さんに涙したり、意外?にもブルースブッチャーズの素晴らしいパフォーマンスに小躍りしたり、とにかく種々雑多、フジロックの醍醐味を満喫させてもらいました。

何がショックと言っても、ホワイトのクラムボンの最中に豪雨のせいでポンチョのシームが一気に崩壊し、背中からびしょ濡れになったためテントに避難。SIAを見逃したのは痛かったw歯ぎしりもしたけど、これもまた仕方なしです。

今回ほとんど思い入れもないSIAを密かに楽しみにしていたのには訳があります。

2年前のフジロックあたりからフェスのパフォーマンスが大きく変わった。

それは受け手である自分が変わったのもあるけれど、確実にアーティストもオーディエンスも変わったと思ったのです。

それはテクノロジーの進歩が大きく絡んでいて、ステージに映し出される映像がメインになってきている感を強く感じたのです。

ライヴはパフォーマンスだけでなく、ヴィジュアル、サウンド、ライティングなどを総動員した総合芸術になりつつあるのではないか?と強く思い始めました。

今回のフジロックはキュアーとの邂逅をメインに、裏テーマはこのライヴの総合芸術化を確認するという目的を個人的に持ってました。

ケミカルやトム・ヨークジャネール・モネイなど海外で先端を走るアーティストに強くその傾向が見えることで、ほぼ確信に変わりました。

少なくともスタジアムクラスのライヴをする人たちにとって、この総合芸術化は免れ得ないんだと思います。どれだけすごい演奏をしようが、このヴィジュアルやコンセプトでパフォーマンスを支えるのは必須のように思います。

今年のフジロックを3日間体感して痛感したのは、このライヴの総合芸術化です。

私たち世代からしてみれば、MTVで起きた商業的革命、PVの先鋭化と同等の変化、もしくは激震が起きているということだと思います。

これからライヴパフォーマンスは大きく変化していくと思います。

で、その一方でその流れに抗うように人間力を最大限に発揮するアーティストがいるのも面白く、個人的にそちらに大きく共感するのですが、これから続ける寸評でそれらをあげて綴っていきたいと思います。

 

フジロック2019 誰がなんと言おうと、今年のヘッドライナーはキュアーなんですっ。

ここだけの話ですが、私キュアーの大ファンです。

「wish」リリース時にロバートが「解散する」などと言うもんでイギリスに飛んで行って、エディンバラマンチェスター~ロンドンと追っかけを敢行したくらいです。

ロンドンからキュアーのライヴ会場行きの地下鉄臨時列車が走っているのに唖然としましたw車内にはロンドンのロバートコスプレ集団が大量に乗っていてワクワクしたもんです。

フジロックでヘッドライナー3回も務めた今となっては信じられないようですが、キュアーが来日するなんて、海外での人気の温度差から考えたら夢のまた夢だったんです、当時はw

その結果、今もキュアーの人気は日本では芳しくないと思っているので、最悪後二日の通し券でいいやくらいに高を括っていたのが売り切れまであぐらをかいていた原因なんですねwファンなのに高を括るという最悪の事態が…w

だからというのもなんですが、売り切れになった時はどうなるかと思いましたw

もはやこれまで…と何度思ったことでしょうw

ギリギリ一週間前にどうにかチケットを入手(もちろん定価以内で)できたので、一安心です!

と言うか、これからタイムテーブルと本気でにらめっこしていくことになりますが…

 

 

正直キュアーは今持って日本で人気はないと断言しても良いと思いますw

では、なぜスマッシュはキュアーを3度もヘッドライナーにしたかというと二つ要因があると思っています。

1 スマッシュの男気

2 海外、アーティストたちへのブランド訴求

この二つに尽きると思っています。

キュアーがヘッドライナーを逆指名しているフェスというブランドがどれだけ大きいかをスマッシュは分かっているとしか思えませんね。

様々なアーティストがカバー。それだけでなく、40年近く現役どころか最前線に居続けただけでなく、シーンに大きな影響を与え続けたことの凄さというか、まあ日本国内では分かりづらいですからね。

 

驚くのはここ最近のフェスでのライヴをとにかくストリーミングしまくっていること。

フジロックでもストリーミングが決定してますが、そのライヴの迫力は後期絶頂期の「wish」で見たツアーと比べても遜色ないプレイを見せていて、ロバートの声も全く衰えていません。

特にfrom the edge of deep green seaのギターアレンジは出色で、正直ストリーミングなのに興奮を抑えきれませんでしたねw

こちらでどうぞw➡️

 

www.youtube.com

 

楽曲もバンドサウンドとして全く色あせていない。(バンドサウンドが時代遅れになっているという現状を除けばという条件付きですけどw)

特にshake dog shake~from the edge of deep green seaというファンなら身悶えしてしまう流れ。この後、fightとかscrewとかきたら失神してしまいそうですねw

いわゆるダークサイドキュアーの面目躍如といったオープニングです。この幕開けだけでロバートの本気具合がうかがえるというものです。

この2曲はシングルカットされた曲ではなく、アルバム収録曲としてファンの間で人気が高くなっている曲です。キュアーにはこういう曲が結構ある。

シングルカットした人気曲も沢山あるのですが、案外シングルカットしていない人気曲が多いのも根強い人気を証明していると言えますね。

 

おそらく多くの人がジェイムス・ブレイクに流れることでしょう。そんなの想定の範囲内です。

個人的には時間帯をずらしてくれたらありがたかったし、ジェイムス・ブレイクも見たかった…。

でも、今回のフジロックの主役はキュアーなんですw誰が何を言おうとw

40周年のワールドツアーなんですよ、各国のフェスで軒並みヘッドライナーを務め、そのバンドの偉大さを証明するライヴでがっつりロバートはその偉大なる勇姿を披露する世界行脚の場として機能しているんです。

グラストンベリーを筆頭に各国のフェスでヘッドライナーなんですっ。

だから誰が何と言おうとフジロックの正真正銘ヘッドライナーはキュアーなんです。

ほぼチケット売り切れ状態になったのもキュアーがヘッドライナーだからなんですw

もうそれでいいんです!反論なんか受け付けないし、聞く耳持たないです。

みなさん、グリーンステージでお会いしましょうw よろしくお願いします。