ジャケ買いはアリかなしか? ルイーザ・ブリーナ

音楽ファンの間で永遠のテーマの一つは「ジャケ買いは、ありかなしか?」でしょうw

正直、ジャケ買いで好きになったアーティストが誰しもあるのではないでしょうか?

私は結構「あり派」です。

ジャケットでピンとくることが結構あって、それが当たる確率が高い方だと自負してます。(もちろん、大ハズレもあるんですけどねw)

ここで問題があって、クラシックとかはダメな気がするし、ジャズはジャケが良いのが多いのでダメな気がします。メタルは美意識が違うし、プログレも独特な美意識があるので、結構厳しいですw

ただ、自分が主戦場にしているポップ系は美意識もバッチリだし、当てる自信が結構ありますw

つまりジャケ買いがアリなのは自分がメインにしているジャンルに限ると言うことだと勝手に決めています。いや、決めちゃいますw

例えば、このジャケットは「この顔にピンときたら…」ってくらい、渋谷のユニオンでピンときて、音も聞かずに買っちゃいました。

そして、それから20年。日本では決して売れも話題にもなりませんでしたが、ずっとファンでいます。今でも新作が出ればすぐに買ってしまうくらいです。

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どうでしょう?説明なんてできないですw

ただ、ユニオンで「この顔は…間違いない」と思っただけですwどこがとか、ここがポイントなどありません。どこかのアイドルの「ビビッときた」って奴ですw

それからも何回かそういうジャケ買いをして、当てたことがあります。

ここ最近でこれは…とピンと来たのがブラジルのルイーザ・ブリーナです。

店頭で「これしかない」と確信を得たジャケットがこちらですw

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どうですか?もう、このB級感もたまらないのですが、こちらのCDは変形の横長ジャケットでブックレットになっています。それもまたグッときたポイントでした。

音的にはアドリアーナ・カルカニョットをもう少しポップにした感じで、ギターポップに近いのでブラジル好きよりインディーポップが好きな人が気に入る感じでしょうか。

かといってギターバンドのような直球ではなく、リズムやグルーヴが変則的でちょっと病み付きになる感じがあります。

結構愛聴していたので、新作が出たとのことでワクワクしながらジャケットなどビジュアルを見てみました。

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良いですね〜wしかも音もチェンバーがかっていて好みだし、フェルナンド・タカイなども参加しているようです。

益々楽しみになってきました。

この人も個人的にはビジュアル系として愛聴していますw

チン・べルナルデスといい、この人といい、ちょっと60年代ポップのフレイヴァーが漂うブラジル系が面白い感じです。

未だ残響が止まらない〜ディアンジェロ「ブラック・メサイア」

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久方ぶりにディアンジェロの「BM」を聴きました。

CDでずっと聴いていたけれど、たまたま安価なアナログを発見し、購入したからです。

2014年リリース。もう5年も経ったのかという感慨を持ちつつですw

強烈に印象に残っているのは、その年を象徴したのがディアンジェロとK・ラマーで、他のギターバンドや電子系の作品は比較にならなかったことでした。(個人比)

「時代は変わったなあ…と」

それくらいのインパクトと説得力が2作にありました。

作品についての諸々は、最早語り尽くされている感がたっぷりなので、置いておきます。

個人的に改めてアナログで聴いてみると、何よりベースを中心にどす黒いグルーヴが強烈で、ピノ・パラディーノ+クリス・デイヴの功績が大きいように思います。

(この点については、B・ハワードの新作と絡めて何かしら考えたい話ですw)

そこにはスライやプリンス、カーティスで感じるクールにうねり続けるグルーヴに巻き込まれていく快感を感じます。

もちろんそれを「ドス黒い」と言ってしまうことも可能ですが、個人的にはディアンジェロには黒も白もないボーダレスな印象があります。

だからこそ聴いていてプリンスやスライが想起させられるのです。

ブラックにしか出せない音でありながら、排他的な黒ではない感じでしょうか。

「ああ、プリンスはいないんだな。ディアンジェロはプリンスの後継者なんだな」という感慨を強く感じました。それはリリース当初には、勿論感じなかったことです。

プリンス逝去の報が流れ、個人的に驚いたのは同時期に亡くなったD・ボウイ以上にショックだったことです。

ボウイが大好きだった僕は、ここまでプリンスの死に大きな喪失感を感じるとは思いませんでした。

記憶によれば中学の最後に「パープル・レイン」〜「アラウンド・ワールド・イン・ア・デイ」あたり。高校の時に「ラブセクシー」と強烈なパンチをリアルタイムに受けたのも大きいとは思います。

しかし、比較するものではないですが、ボウイ以上にプリンスは唯一無二の存在だった気がします。

ディアンジェロがプリンスを追悼して早い段階でパフォーマンスを披露し、その楽曲が「Sometmes it snows in April」だったのは嬉しかった。というか共感しかなかった。

(その後、ミシェル・ンデゲオチェロもカヴァー)

決して代表曲として真っ先に出てくる歌ではないし、プリンスの中でも黒さがほぼ感じられない名曲です。

その歌を選んだことのディアンジェロの意図は何だったのか?

ブラックとしてのプリンスではなく音楽家としてのプリンスを念頭にセレクトした。

とか、考えられなくもないですが、何より「好きな曲」だったんだろうとw

「Sometimes it snows〜」の繊細な感じ、J・ミッチェルやJ・イアンからの影響を公言していたプリンスの繊細な部分や黒や白の括りに入りきらない広い感受性を持った才能に敬意を表したんだと思いたいw

ディアンジェロの現状最新作の「ブラック・メサイア」をプリンス逝去後に聞くと、一層プリンスの影響を感じてしまいます。

繊細なファルセットで歌えるバラードや、ジャジーでクールなファンクナンバー、決して熱くなりすぎないよう過剰に抑えた熱い演奏w

どれもがプリンスの教えに則っているように思えてきます。

その後、ジャネール・モネイなどプリンスフォロワーは後を絶ちませんが、やはりディアンジェロが最右翼であるのは間違いないように、やはり思うのです。

今聴いても傑作。全く色褪せることのないスケールの大きな作品でした。

 

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それは初期ビートルズのそれの位置づけw シルビア・ペレス・クルス

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来日をきっかけにシルビアの情報が入るようになって嬉しい限り。

再来日公演は、公演時間に物足りなさを感じるものがあったとはいえ、素晴らしい内容とシルビアの歌い手としてのスケールの大きさをまざまざと見せつけられるものでした。

シルビアのアーティスト志向がドンドン大きくなり、最新作「Vestida de nit」で炸裂した印象がありますが、彼女がかつて在籍したlas migasの音源は、なかなか入手が難しい状態にありましたが、めでたくアナログで再プレスされ、少しだけ入手しやすくなったのはファンとしては嬉しい限り。早速入手しました。

配信では早くから聴けるようにはなっていましたが、ここはアナログで入手したところで感想を少し。

本作は近年のシルビアの少々重厚でアーティスティックな作品と一線を画し、バルセロナ出身の彼女の歌い手としての剥き出しの魅力を味わえる傑作と言えるものです。

カタルーニャ地方の伝統的な歌にフラメンコ、ファドなどの要素が加えられた多国籍音楽でありつつ、若さを強く感じる好盤と言えるでしょう。

特にアップテンポな曲での堂に入った歌唱、アラブ地方のグルーヴにも似たエキゾチックな歌唱などは、この頃の方が魅力的とも言えます。

すでにバンドのスケールを上回っているのが見て取れますが、とはいえlas migasもかなり腕の立つメンツのようで、決してシルビアに負けていない。

楽曲もメンバー合作のものやカヴァーがあるようですが、非常にクオリティが高く、シルビアの隠れた作品の域からは優に逸脱した内容になっています。

強いてあげれば後期のコンセプトアルバムに比べて、芸術性では劣るものの、楽曲としてはそのポップさや聴きやすさ、シンプル故の魅力を醸し出す初期ビートルズのアルバムのような印象を受けます。

サージェントやホワイトアルバムもいいけど、ア・ハード・デイズ・ナイトの3分間マジックも捨てがたいというような印象でしょうか。

とにかくシルビアのキャリアを俯瞰する上で重要な作品の一つなのは間違いありません。

個人的には結構繰り返し聞いてしまう、若きシルビアの魅力を満喫できる作品です。

ファンならマストw

シティポップの理想形 高橋幸宏「A Night in the Next Life」

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シティポップ全盛ですね。竹内まりや山下達郎を筆頭にニューミュージックと呼ばれていた音楽が名前を変えてイマドキに舞い戻ってきています。

しかし、ほとんどがブラコンテイストを内に秘めているものが多い傾向です。

それ以外にも洗練された美しい音楽があるので、ここでご紹介。

ちょっと昔の作品を。と言っても、モットーは出会った時が貴方の新譜ですからw

1991年に開催された高橋幸宏のソロコンサート。これは珠玉の作品ですよ。

YMOでも、その控えめでお坊ちゃんな人柄から少々印象が薄い。

強烈な天才性を持つ細野さん、匂い立たせる芸術性とカリスマ性が尋常じゃない教授に挟まれては仕方がないですが、高橋幸宏の良いとこ育ちの洗練さは本物です。

バックに小原礼、KYON、矢口博康、ゲストに鈴木慶一と鉄壁な上に、この録音の演奏は凄まじく洗練されている上に抜群の躍動感です。

細野さんの曲を複数カヴァーする辺りに育ちの良さが出ていますが、これが素晴らしい!「ありがとう」「機関車」だけでも痺れます。加えてビートニクスの名曲やソロの名曲がこれでもかというくらい惜しげもなく連発。

ちょっと入手しにくくなっていますが、初回リリースよりも再発の2枚組がおすすめですよ。

何せアンコールディスクと銘打たれた初回未収録の楽曲は、これまた細野さんの名曲「はらいそ」にソロ時代の名作「音楽殺人」が収録!とても未発表とは思えないクオリティです。

この録音も楽曲に合った透明感のある綺麗な音で、心地よさがハンパない。

高橋幸宏の一歩間違えば甘ったるいラヴソングが際立って聞こえるのは、この盤の録音のおかげもあるんじゃないかと思うくらい繊細で美しいです。

また KYONを中心にニューオリンズフレイヴァーが加味されていたり、矢口博康のアーバンなAOR的なサックスも素晴らしい。正直隙が見当たらないパーフェクトポップです。

もっとも好きなAORアルバムと言っても良いくらいの大人で美しいライヴです。

高橋幸宏さんの魅力がもっとも強烈に伝わる名作です。ぜひ探してみてください。

 

ブリタニー 炎情

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そもそも情念の人なんだけど、ソロ1stの炎情ぶりが素晴らしい。

アラバマ・シェイクスも素晴らしいんですけど、どうも一本調子の印象が1stであったのは確かで、逸材だけどアラバマでやっていくと単調になりかねない危うさがありました。

ところが2ndで、良い意味での裏切りを成し遂げたのでした。

ロックと南部ソウルとブルースのスクンブル交差点に仁王立ちするような、ボーダーラインを闊歩するサウンドには痺れました。

特にソウルフルな楽曲からブルースへスライドしていくようなハードな楽曲や、アーバンソウルのような洒落っ気のある楽曲をこなす姿に、案外器用なのねと納得。

そのアラバマのvo、ブリタニー・ハワードのソロが抜群に良いです。

インタビューによれば、幼くして亡くなった姉へ捧げたアルバムとのことで、より情念の高まりを感じない訳がありません。

出だしっからアラバマにはなかったリズムのカオスを撒き散らし、バックの演奏がそれなりに凝っているのはアラバマの2ndでも散見されましたが、よりフリーなジャズの要素も感じられ、ロックファンにはとても新鮮に受け止められそうです。

印象的には21世紀モードのアレサ・フランクリンカーティス・メイフィールド、フィリーソウルとスタックスの融合?そんな印象です。

楽曲もバラエティに富み、大胆に電子音や声にエフェクターをかけたり、ボーカリストとしての挑戦を忘れていないところが素敵です。

欲をいえば、うらびれたライヴハウスでと言いたいところですが、この歌声、パフォーマンスも込みで、アラバマ以上に観たくなりました。

来年のフェスでは結構引っ張りだこになりそうですねえwフジで是非。

 

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この曲は比較的スタンダード。他の曲はもっとアグレッシヴですw

来日直前!Silvia Perez Cruzの謎のアルバム  ”Llama"

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待ちに待ったシルビア・ペレス・クルスの再来日公演。

スペイン・カタルーニャ地方が生んだ至宝。

ファドやジャズ、ポップスなどなどあらゆるジャンルを飲み込む素晴らしい歌い手であるのは、ファンならお分かりでしょう。

そんな彼女のバイオグラフィーに一点、不思議な作品があります。

ハングドラム(以後、ハンドラジャケ)がジャケットになったアルバムとちょっといちゃついている感が強い白黒の二人のジャケット(以後、いちゃジャケ)の2枚。

シルビアとイスラエルハングドラム奏者のRavid Goldschmidtの共演作で、共にタイトルは「Llama」w

ハンドラジャケが2006年リリース。いちゃジャケが2011年にリリースされたリマスター盤?となっているように思われます。

結構前から流通が少なくプレミアがついていたハンドラジャケは聞きたくても聞けない一枚として、ずっとアマゾンなどで見張りをする日々が続いていました。

そんな中、初来日公演の時のグッズ販売のところで見つけたのが、いちゃジャケw

スタッフの話だと「既に稀少盤で、これを最後に廃盤になる」と言われたので即購入を決めたのでした。

ところが、購入後に調べてみるとハンドラジャケといちゃジャケの曲目が全く違う。

かぶっているのは1曲のみ。

ようやく入手した「Llama」のはずが、結局ハンドラジャケを継続して追い求めなければならないことが判明してしまいました。

その後、アマゾンでリーズナブルな値段でハンドラジャケを入手出来たのはラッキーだったとしか言いようがありません。

では、なぜこの作品が入手困難になってしまったのか?更にいえば、なぜ2種類ある上に曲目も全く違うのか?

ファンとしては妄想しないではいられません。

まず思ったのが、いちゃつく二人がアツアツの時期に勢いで作った一枚で、その後破局、シルビアも黒歴史的な一枚になってしまっていると言う下世話な憶測。

もう一つは、シルビアとしても納得のいかない一枚で、キャリアから外したいと思っているため、闇に葬ろうとしていると言うありがちな憶測。

確かに作品としての完成度は高いとはいえません。少しばかりハングドラムの比重が高く、シルビアの歌唱を堪能するには物足りない内容とも言えるでしょう。

しかも、ハンドラジャケはインストも多く、期待を少々下回る出来栄えと思います。

ただ、このような変種はファンとしては大好物。

シルビアがどういう思いでこの作品を作り、今振り返るのか?どのような理由でこの作品を廃盤にまでしようとしているのか?

ちょっとファンとしては出来栄えとは別に、変に好奇心をくすぐられる作品です。

無駄を無駄にしない  渋大祭

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すみません、しばらく間が空いてしまいました。

子供に病気うつされたり、台湾へ行ったりと忙しない日々に奔走してました。

さて、日本が誇るジャズ民族集団渋さ知らズの30周年記念「渋大祭」に行ってきました。

色々なご縁があって、渋さ知らズとは長い付き合いなのですが、今回のお祭りは特別です。

サン・ラ アーケストラ、ザゼンボーイズクラムボン渋谷毅オーケストラ、スガダイロートリオ、中村佳穂、ROVOなど、腕利きが勢ぞろいした濃密なメンツが首を揃えて渋さを祝うというゴージャスなイベントに行かずにはいられませんでしたw

そもそも渋さのライヴ自体が祝祭なのです。

渋さのライヴこそ「旋律の下に皆が集まる祝祭の空間」だと信じている一ファンなので、渋さを祝うというのは「祝祭を祝う祝宴」って、どんだけ祝うんだよwというような妙な感じさえします。

ステージには懐かしいメンバーもいたり、感無量でした。

初めて渋さを見た時、そのいなせなサックスソロにノックアウトされた早坂沙知、大沼ブルースの不穏な雰囲気を醸し出すオルガンソロが大好きだった渋谷毅、「犬姫」の超ロングなピアノソロが強烈だったスガダイロー、背後には勿論御大片山広明の姿もw

芸達者な腕利きが揃いに揃っても、やっぱり現役渋さメンバーが光り輝くのも渋さの良いところ。

日々渋さの旋律の下、グルーヴを作り出している面々の現役感にベテランの名演も交わり、混沌としたグルーヴが益々進化していく展開は、やはり渋さの真骨頂。

ラストはサンバダンサーがステージに並び、肝心の渋さが全く見えなくなるという謎の展開も渋さらしいし、ステージ横でずっと腰をくねらせる看護婦姿のおじいちゃんがいるのも渋さらしい。

なんだろう、無駄なことを無駄にしない渋さの魅力。

なんでもかんでも効率を追い求める窮屈な現代に、渋さの無駄だらけだからこそ醸し出される祝祭の空気に涙が出そうになることがあります。

誰も空気を読まない。ただ「今ここにいること」の喜びを本能のまま曝け出して祝う。

それがサンバダンサーだったり、おじちゃんだったり、バナナを持ったお姉ちゃんだったり、乳房知らズだったり、竜だったり、なんでもあり。

でも、そこに妙な勘ぐりも打算も摩擦もなく、あるがままに受け入れられる空間。

それが祝祭の場であり、渋さ知らズという場なのではないでしょうか?

その居心地の良さに痺れっぱなしでした。

渋さ知らズ、30周年おめでとうございます!