fujirock 2016 総括その2 彼女の涙は何の涙か? James Blake
フジロック初出演の時のジェイムス・ブレイクを見た人で、どのくらいの人がジェイムス・ブレイクに期待していただろう?
センセーショナルと言って良いフジ初出演のステージを上回るどころか、多くの人が失望覚悟でグリーンに集まったようにさえ思います。
かくいう私は正しくそうで、前回のジェイムス・ブレイクに感動し、新作に意気込んで臨んで「なんじゃこりゃ?」という激しい失望を味わっただけに、もし別のステージで
お気に入りのアーティストが出演していたら迷わず、そちらに行っていたでしょう。
静かに始まったステージは、前回と同様の構成、ジェイムスの個性的なボーカル、それにダブ処理された
低音がズ〜ンと響く、デジャヴな光景だったのです。
「ああ、同じか…」
そう思った人も多かったのではないでしょうか?
ところが曲が進むにつれて、ジワジワと染みてくるのです。
しかも前回よりも大きなグリーンステージにも関わらず、全く薄まっていないジェイムスの音楽世界。前回よりも大会場だけにサウンド面での劣化も感じられるにも関わらず、その感動が全く薄まっていないのが不思議なほど、そのステージは感動的なのに驚きました。
内省的な、どこか冷ややかで暗めな音楽にも関わらず、ジェイムス・ブレイクのサウンドは大会場にハマる。
これは、個人的にはとても不思議な光景でした。
周囲の観衆の反応もジワジワとよくなり、ジェイムスのボーカルやダブ処理された反応にヴィヴィッドに反応していく様は壮観でもありました。
ふと横を見ると、若いカップルの女性が、ライヴのクライマックス「The Wilhelm Scream」の最中、ライティングの演出も手伝って、静かに涙を落とした姿は美しかったw
まるでステージとリンクするかの様に、その神々しい光景にしばし見とれてしまった。
そんなマジックがジェイムス・ブレイクのステージには確かにありました。
これだけシンプルな、少々ダークなサウンドが大会場で映えるのは、本当に不思議です。
しかし、十分トリ前の役割を堂々と勤め上げた貫禄のステージだったのは確かです。