時代錯誤で最高な一枚 「Rachael&Vilray」
今やアメリカでは闇に葬られた感のあるウディ・アレンは、こう言いました。
「1930年あたりのジャズは、まるでハチミツのお風呂に入っているような気持ち良さがある」
この言葉は、戦前のジャズやブルース。まだ明確にジャンル分けのできない「ただ単にポピュラー音楽としてあったジャズやブルース」の魅力を一番伝える言葉だと思います。
ジャグやジャイブやアメリカーナのポップな感じが好きな人だったら、間違いなくノックアウトされてしまうような楽しくて、小粋な作りの良曲が揃っています。
吾妻光良が好んでカバーする戦前のブルースにも、そのような最高にハッピーでハートウォーミングな歌が沢山あります。
こういった音楽は、今や絶滅寸前と言うより、絶滅保護されていると言っても良くて、これらを体系的に記録した高音質な音源があれば、本当に欲しいけれど、そのようなものは需要も存在もないようです。
さて、そのような音楽に偶然出会いました。
LSDのレイチェルがノンサッチからリリースした「レイチェル&ビルレイ」。
そもそもこの二人、学生時代からの知り合いなんだそうで、上記のようなジャンル分けしづらい音楽が好きだとは互いに知ることなく21世紀に入って、二人でこの作品を作ったとか。
そもそも聞いた時は良い歌を発掘して、うまくカヴァーしてるなと思ったのですが、これビルレイのオリジナルだそうで、まずそれにびっくりしました。
今時このような歌を作れる人はそうそういないし、作ろうとする人も稀なのではないでしょうか?
そして、何より演奏が素晴らしく、音が良い。
アナログ向けの音なので、私はアナログで購入して聞いていたのですが、ひょっとしたらと思って配信を聞いてみると配信でも十分臨場感のある良い音でしたw
そもそもの録音が良いようです。はい。アナログにこだわりがなければ、配信やCDでも十二分に歌と音が楽しめると思います。
ジャケットからもわかる多幸感溢れる一枚。こんな湿っぽい世だからこそ聞いて元気を少しでも出したい一枚です。