字余りの魔術師 ディランとOCMS
アメリカーナ、特にカントリー寄りの2、3年前にリリースしたアナログとかが、かなり叩き値で売られるのを目にするとゲットする頻度が高い。
ここらを狙い目にする理由を説明すると長くなるので省きますが、ここらが当たりの確率が滅法高いのです。
OCMSは、ギリアン姐とツアーをしたりする実力派の中堅バンドで、カントリーシーンのポーグスのような存在と言うと分かりやすいかもしれません。
そのOCMSがディランのあのアルバムを丸々カバーしたライヴアルバムを出して話題を集めたのが数年前(日本では勿論話題にもなりませんでしたがw)
ディランの「追憶のハイウェイ〜」は個人的に最強のロックアルバムの一つと言い続けた者としては是非とも聞いてみたいと思っていたのです。
このアルバムが到着する前に本家を聞いて驚きました。何よりも今聞くと十分ポピュラーだし、演奏は非常に下世話で淫靡wだったのです。
で、問題のカバーアルバムを聞くと、一層ディランの偉大さを知ることになりました。
ディランの歌で個人的に強く思うのは、字余りの歌詞がディランならではの独特のグルーヴを作り出していて、それが大好きだと言うこと。
あの投げやりな歌い方がディラン節と思われがちですが、どちらかというとディランをディランたらしめているのは、このリリックの字余りが作り出すグルーヴだと思っています。
大げさではなく、この字余りが生み出すグルーヴを作り出す天賦の才能を持つのは、ディランと尾崎豊で強く思います。周囲の同好の音楽ファンには内緒にしていますがw
このカバーアルバムを聞いても、その自説に何の揺らぎもありませんでした。
字余りのリリック部分でディランの存在を強く感じずにはいられません。
勿論、それはOCMSにとって成功なのか失敗なのかは聴く人によって分かれるのかもしれませんが、個人的には非常に満足できる内容であると言っておきましょう。
ディランのカバーは好きなものが多く、名作を生みやすいと思います。
実はメロディが良いのに、ディランの癖が強すぎて印象が薄くなってしまうことが多いからだと思っています。
ただ、このライヴアルバムを聞いて思うのは、演奏自体は本家の方がストレンジな上に伝統に則っているのに大衆音楽的な印象を強く持つことです。
「ブロンド・オン・ブロンド」は、リリースから半世紀経ってもなお、その強靭なオリジナリティと普遍性、そして前衛性を持ち続けていると言うことでしょう。
名作の中の名作。追憶〜ブロンドのディランは、とてつもなく強力なブツだと改めて痛感させられます。
本家本元を、もう一度聞きたくなります。