今年も天才は働いていた キャロライン・ショウ

 

 

 

昨年から今年にかけて、妄想していたのは、クリス・シーリーvsキャロライン・ショウの怪物的天才同士の対決(共演)でしたw

ザッパ的な雑食性をいかんなく発揮し、ヨーヨーマを飲み込み、メルドーに歌を歌わせてしまう大物食いを得意とするクリス。

一方、明確な世界観を揺らがすことなく、ymusicやso parcussionなど声楽、四重奏、アカペラ?まで独自の美学を拡大し続けるキャロライン。

この二人のワーカホリックっぷりと多彩さには、本当に頭が下がります。

ということで、クリスに一歩も引かない(個人見解)キャロラインのPVをどうぞ。

なんか共演の噂がチラチラ聞こえてきているので、激楽しみにしているんですけどw

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ストーンズはAppleのCMで聞いた女の子

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巷で(勿論、好きものの間でですがw)評判のMolly Tuttle。

ルシンダ姐やギリアン姐は言うまでもなく良いのだけれど、カントリー畑で言えば、少々亜流と言わざる得ません。

女伊達らというか、ダミ声だったり、従順じゃなさそうだったり、正統派の女性Voとは言い難いのは仕方ない。

エミルー姐のような正統派リスナーさえも溜飲をさげざる得ないような歌い手も出てこないといかんのではないかと、極東で勝手に憂いていたところで、Mollyの登場は吉報でした。

声、ルックス、サウンド、どれをとっても正統派。

1994年生まれ。少女時代から天才的なプレイヤーとして名を馳せ、13歳で父親と連名でデビュー、1stアルバムはエヴァーグリーンなサウンドの快作で、一気に名を馳せました。

2ndでは気鋭のアーティストのカヴァー、FKAツィッグスやナショナルのカヴァーと新世代であることを高らかに示しています。

特にストーンズの「She’s a rainbow」は、いかにもAppleのCMでストーンズが好きになりましたといった軽やかさがあり、出色の出来です。

モリーのフラットピッキングの腕は素晴らしく、ギタープレイ自体は、なんとデイヴ・ロウリングに大きな影響を受けたとか。

デイヴも「彼女のプレイは間違いない」と太鼓判を押すほどですから大したものです。

 

彼女の1stから先日リリースされた3rdまで作品は手堅い。

3rdには、ファンからゲストを活かし切れていないとか、ソングライティングに目新しさがないと手厳しい言葉が続いていましたが、それもこれも彼女への期待が大きいからに他なりません。

モリーのギターサウンドはアナログ映えするのではないかと思い、1st、2ndを購入しましたが、これはレコード会社が手抜きなのか、近年稀に見る音の悪さ。

モヤがかかったような音で、肝心のモリーのギターが奥に引っ込んでしまっていてもどかしい。

配信の方がギターが前に出ていて、インパクトもある強靭なサウンドなので、アナログはおすすめしません。

3rdはノンサッチなので改善されている可能性が高いのですが、2枚とも音が劣悪だったので二の足を踏んでしまっています。

 

誤解なきようお願いしますが、モリーはこれからアメリカーナシーンを引っ張っていく若手なのは間違いありません。

ベラ・フレック同様、バッキングの名手のような存在になりがちなシエラ・ハルやサラ・ジャローズと共に、アメリカーナ女性シーンを活気づけてくれることを期待したいものです。

 

ついにあのプロジェクトが本格始動?

 

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ひっそりとリリースされた1stアルバムで、アメリカーナ愛好家に大きな衝撃を与えてくれたBonny Light Horsemanが再始動するようです。

アナイス・ミッチェルのソロアルバム、Big Red Machineでテイラー・スウィフトと肩を並べてのボーカル参加など、アナイスの活動は活発だったので、余り「遂に」感はありませんが、それでもあの奇跡的なアルバムを再びと思うファンにとっては、待望の活動再開です。

 

もう、リリース発表などではなく、サブスクで新曲をリリース。ついでアルバムリリース日時の発表が普通。

Bonnyも例にもれず、10月の新作リリース発表と時を同じくして新曲がアップされています。

ただ、これが聞いてみると普通なんです。

あのヒリヒリとした緊張感。古典のカヴァーと言うルールの下、あの濃密な空気の中で解き放たれる歌声と無駄のない演奏に比べると新曲は少しルードな印象が強いです。

さて、新作はいかに?

とはいえ、あのユニットが駄作を作るとは(今のところ)到底思えません。

先ずは次の作品発表を待とうと思います。

少しドキドキです。

良きリスナーは良きアーティスト Bruce Hornsby

良いリスナーが良いアーティストにちがいないと思うのは、D・バーンのプレイリストを見ていると、なかなかの説得力を持ちます。

バーンがStビンセントと共演をしたり、かつてはカエターノ・ベローゾと連名のライヴアルバムをリリースしたりすると話題にもなるますし、注目を集めますが、日本では一発屋の印象が強いだけにスルーされてしまうのがブルース・ホーンズビーでしょう。

かつてはグレイトフルデッドに参加したり、最近のアルバムではymusicやジャミラ・ウッズと共演。

なかなかにめざとく新進気鋭のアーティストと共演していますが、先行シングルでフューチャリングされているのは、なんとブレイク・ミルズと分かっているな~という感じです。

あまりにもアクロスザボーダー過ぎて、ジャンル分けが難しく話題にも上がりにくいですが、ノイズメーカーズ名義になってからの彼の作品は常に注目に値します。

新しい音楽の視座が欲しい人は、彼の音楽を追っかけることをお勧めします。

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突然トッド・ラングレンのごとく Rostamのどうやってもポップソング

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元ヴァンパイアウィークエンドという冠が意味をなさない異色のポップシンガーがこのRostam。

ノンサッチャーとしては大注目のアーティストですが、この人一筋縄でいかない。

ポップソングを量産しているですが、美メロながら必殺のポップフレーズで聴くものを鷲掴みするタイプではありません。

むしろ楽曲の構造やサウンドプロダクションはアヴァンギャルドだったりフリーミュージックに近いところがあって、決してとっつきやすくない。

全体的な印象は超ポップなのにディテールを突き詰めるとアヴァンギャルド

これって天下のポップ職人トッド・ラングレンに非常に近い印象がある。

何をやってもポップソングになってしまう業を感じるところも一緒。

ポップソングを作る故にマニアックになってしまうこのタイプの人は、落ち着くところは通受けするアーティストになってしまうのが容易に想像できるのが切ないですw

ギリアン・ウェルチとは誰か?

ギリアンウェルチ

1967年に生まれたギリアン姐は、出世作「Orphan girl」とあるように、実際に孤児であり、ウェルチ夫妻に引き取られ、育てられました。

学生時代はゴスバンドなどでベースやドラムを担当、友人がスタンレーブラザースの音源に合わせて演奏しているのを目の当たりにし、自分が一生かけて演る音楽に出会ったという賢明な判断をし、今に至っています。

デビューは1996年、既にデビュー当時からタイムレスだった「リバイバル」をリリース。アメリカーナの旗手T・ボーン・バーネットのプロデュースによります。

それ以来、現在(2022年)まで四半世紀の活動で世に出したオリジナルアルバムはわずかに5枚。未発表客集を2セット。寡作にもほどがありますが、そのいずれもが素晴らしいものであり、ノラ・ジョーンズをはじめ、多くの女性シンガーからリスペクトされる存在となっています。

 

さて、ギリアンウェルチですが、ファンにとってギリアンウェルチというソロ名義は正真正銘ソロアルバムといって良いのか?という疑問がずっとついて回っています。

夫であり、よき音楽的パートナー、デイヴ・ローリングと共に確固たる世界を築いていますが、アルバム、ライヴともども彼のギタープレイは見どころの一つとなっています。

勿論卓越したソングライティング、彼女ならではのゆらぎのある歌声など魅力は沢山ありますが、デイヴのギタープレイはギリアンサウンドになくてはならないものです。

私はパリでギリアンのライヴを観ることができましたが、その時のハイライトの一つは「ホワイトラビット」のカヴァーでのデイヴのギターソロでした。

 

つまり、ギリアンウェルチとはギリアンとデイヴのユニット名と捉えておくべきというのはファンならば至極当然のことと言えます。

 

ただ、話をややこしくしているのが、デイヴのソロ作品です。

Dave Rawlings Machine名義でオリジナルを2枚。David Rawlings名義で1枚アルバムをリリースしているのです。

いずれも2009年、2015年、2017年のリリース。

ファーストソロのジャケットはいかにも彼のソロというジャケットですが、2枚目にあたる「NASHVILLE OBSOLETE」では、もはやユニット「ギリアンウェルチ」のジャケットとしか言いようがないものになっています。

 

更に事をややこしくしているのは、2020年にリリースされたグラミー賞を受賞したカヴァーアルバム「All The Good Times Are Past&Gone」です。

こちらは自らのレーベルからフィジカルリリースし即完。その後、再度一般フィジカルリリースを2022年にしています。

ここで、ついに名義はGillian Welch&David Rawlingsとなりましたw

ギリアンウェルチとはソロ名義なのかユニット名なのか?はたまた名義はいい加減なのか?

長年ファンを続けてきて、更に闇の中となった気がします。

 

作品の内容によって変わるのではないか?と思う方もいるでしょう。

確かにDave Rawlingsのアルバムでは、メインボーカルはデイヴでギリアン姐はコーラスを取っているので異論はないと言えばありません。

ギリアン名義のアルバムの主導権がギリアンにあるというのが判断基準という推測もできるでしょう。

 

良い意味で、ギリアンウェルチの世界観はギリアン名義もデイヴ名義も全く違いません。

むしろ、カヴァーでさえ、その世界観が見て取れる強靭な個性を持っています。

翳りや哀愁に満ちたメロディ。ギター2本(バンド形態もありますが)、もしくは無駄なものをすべてそぎ落とした潔い演奏にギリアンの儚げな歌声がマッチして見事なギリアンワールドを構築しています。

 

だからこそなおさら、ここでAll The Good Timeで両名名義が出たことで、この解釈もビミョーになってしまいました。

 

デビュー曲に戻ってみましょう。

自らの出自を全面に押し出した「Orphan girl」。

孤児であった彼女にとって、孤独はとても身近な親しいものだったにちがいありません。

もしかしたら、孤独感を抜きに自らを表現することは無理だったのではないでしょうか?

彼女の歌う名曲の数々は、いわゆるポップソングとは言い難いものです。

むしろ、少々眉間に皺を寄せて歌うし、聴く側もまるで良質な悲劇でも見ているかのような表情で彼女の歌を聴き、感情移入していく類のものと思われます。

個人的には日本でいえば八代亜紀の「舟唄」や「夜の慕情」を想起します。

寂寥感は彼女の歌には常について回っていますから、そこには彼女の出自と無関係ではないと言えるのではないでしょうか?

 

「もう、孤独も不幸も沢山…」

そう歌うことで、「だからこれからは!」というちょっと遠回りな希望を讃えた、そんな歌のような気がします。

ギリアン姐にとって、彼女を取り巻く世界は決して優しくなく、単純に楽しいものではないように聞こえます。

しかし、デイヴのソロも同様です。

ミイラ取りがミイラなのか、長く連れ添うことで同化していったのか。

とにかく、二人の音楽はまったく揺らぐことなく、彼らのエレジーは変わることなく紡ぎ出され、歌い続けられることと思います。

 

ここまで書いて言うのも何ですが、私は二人がどのような名義でリリースされようと関係ありません。

そもそもが寡作過ぎる二人ゆえに、出していただけるだけで感謝しかありませんw

ここまできてなんですが、二人にとって名義など些細なことなのでしょう。

歌うべきメロディと歌詞があるだけ。それを丁寧に歌うこと以外に、あまり関心がないのかもしれません。

むしろ、そうであって欲しいと思います。

 

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この歌を作ってくれたのだから、一生食べていける権利がある Silvia Perez Cruz

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長年音楽を聴き続けていると、「こんな素敵な曲を作ってくれたのだから、一生食べていける権利くらいあげたい」と思うことがありますw

一人毎日一円でも良い。その歌を愛するリスナーが毎日1円、月30円程度で払い続ければ、少なくとも食べていけるのでは?と考えることがあります。

例えばD・ボウイの「ライフ・オン・マース」、ビーチボーイズの「駄目な僕」

こんな美しい曲を作ったのだから当然の権利だと思ったりします。

すれっからしになり、歳と共に感性も鈍化するのでしょうか?そこまで打ち震える感動に出くわすのはなかなか稀になります。

そんな中、ここ数年でこの歌くらい震えた歌はありません。

2020年リリースされたシルビアのアルバム「farsa」に収録された歌ですが、映画のために書かれたようで、2018年にはネット上で視聴可能な歌でした。

映画の挿入歌か主題歌になった歌で、PVには映画のシーンが幾つか挿入されています。

しかし映画の挿入歌としては失格かもしれません。これだけ存在感があり、聴く者を惹きつけてしまうのは映画音楽としてはダメなんじゃないでしょうかw

ここまで歌声と共に震えw、様々なイメージや感情を沸き立たせる歌は珍しい。

古風なメロディの集積のようでありながら、アグレッシヴな演出もあり、シアトリカルな歌に仕上がっているのもシルビアのアーティスト性故でしょう。

わずか2分程度の短い歌ですが、シルビアのアーティスト性や世界観が詰まった代表作の一つと言いたい一曲です。