お前をブルーグラスにしてやろうかっ! クリス・シーリの雑食性と順応性

f:id:shibusa423:20171221215334j:plain

自分にとって、今年はクリス・シーリ&ブラッド・メルドーに始まり、このクリス・シーリの「Thanks for Listening」で締めくくったと言っても過言ではないかも。

何せ、クリス&メルドーのパンパン膨れ上がった期待をも上回る素晴らしいアルバムにノックアウトされ、狂ったように聴き続けたのに、年の瀬迫った今、このような全く色合いの違う傑作をリリースするのだからクリス・シーリ恐るべしです。

今回の新作はブルーグラスじゃありませんw!純度の高いポップスです。

そして、このアルバムでクリス・シーリはシンガーとして確固とした地位を確立したと言ってもいいかもしれません。

超絶技巧のマンドリン奏者として語られがちなクリスですが、実はソロ、パンチブラザース、数々のデュオとワーカホリックに仕事を重ねる中でシンガーとしての実力を恐るべきスピードで上げてきていました。

その成果がこのアルバムの聴きどころであり、クリスのキャリアの中でも意味を持つものになっていると言えるかもしれません。

驚くべきことに、このアルバムではあのバンジョーをプレイしていない楽曲さえあるのです!

更に、パンチで披露したB・ウィルソンばりのポップソング組曲を鮮やかなコーラスワークで聞く者の度肝を抜いた才能もいかんなく発揮しています。

とにかくAORのような美しいハーモニーとメロディに驚かされるのは必至です。

本作はクリスが担当したラジオ番組で披露された楽曲を集めた、いわばオムニバス形式と言っても良い作品ですが、オムニバスであるからこその自由さをクリスは謳歌しています。

様々なスタイル、時にドリーミーなポップスであったり、胸を締め付けられるようなAORばりのポップチューンだったり、ディスコソングのような軽快なチューンだったり、クリスがしょっちゅう見せている信じがたい音楽に対する雑食性が全開です。

そのバラエティに富んだ楽曲群が、まさにクリスマスの夜に街に流れている楽しげなラジオ番組のような雰囲気を醸し出している。

クリス&メルドーでアーティスティックでもある強者同士のせめぎ合いを軽やかにやってのけた後の肩の力は抜いているけれど、職人技として言いようのないパーフェクトなポップスアルバムを出すあたりに、クリスの底知れない才能が見て取れます。

サラ・ジャローズやイーファ・オドノバンなどお馴染みのシンガーもゲストで参加。

現在進行形でクリスを楽しんでいるファンならば、間違いなく楽しめる一枚。

そして、知らなかったファンにも門戸が大きく開かれた一枚でしょう。

唯一欠点があるとしたら、初めての人には大きな誤解を招きかねないことくらいでしょう。

www.youtube.com